ひとことまとめ
この本は、
伝わる言葉を生み出すには、外に向けて上手く言葉を発する技術だけでなく、
「内なる言葉」を磨いて、ちゃんと中身のあることを言おう。ということを教えてくれる本です。
二行要約
この本の大筋は大きく下記の2点です。
- まず、伝える技術よりも伝える中身=「内なる言葉」の存在を認識し、自分の中の内なる言葉を育てることが大切である
- 内なる言葉を育てたうえで、いくつかのスキルを使って言葉をアウトプットすることで、伝わる文章を書くことができる
解説
本書ではまず、「伝わる言葉」を作るために必要なのは表面上のスキルだけではなく、そもそも「何を言いたいのか」をしっかりと自分で把握しておく必要があるという解説からスタートします。
例えば、何かを褒めるときに「やばい」しか言わない人は、人にその凄さを伝えることができるでしょうか? おそらく難しいでしょう。
これは「やばい」を言語化できていない状態であって、「何を伝えるか」が定まっていない状態です。
何かを伝えたいならば、「どう伝えるか」よりも「何を伝えるか」のほうを先に考える必要があるということです。
「内なる言葉」を育てる
「何を伝えるか」を整えるためには、まずは「内なる言葉」を育てる必要があるといいます。
内なる言葉とは、「脳内で発している独り言」でもあり、自分が何かを見たり感じたりしたときの「これは〇〇だ」と自分で理解するときに使う言葉です。
例えば、これを見てください。
頭の中で、どんな言葉が浮かぶでしょうか?
わたしはこれを見て「シェケレ」という言葉がうかびました。
なぜなら、名前を知っていたからです。
では、これはどうでしょう?
ハンバーグ師匠のアレね、と思った人、いますよね。
どこかで見かけたことがある人は「カーッ」と鳴るこのアイテムをイメージできたけれど、言葉には出来なかったかもしれません。
ちなみにこの楽器はビブラスラップと言います。
このように、内なる言葉、頭に浮かぶ言葉というのは「何を知っているか」「何を考えているか、何を考えてきたか」などの影響を大きく受けます。
厳選ポイント3つ
本書で紹介されているステップを要約すると以下のようになります。
「内なる言葉」を磨く第一歩として、考えを深める
解説
まず初めのステップでは、自分の頭の中を整理して、考えを深めるところからスタートします。
人間の脳みそは「同時にいろいろなことを考えること」ができないようになっています。そのため、考えていることが堂々巡りになってしまい、長時間思い悩んでいるのに結局同じことばかり考えていて、全然深まっていかない。ということが発生します。
これをやっていると「内なる言葉」がなかなか育たない原因になります。
これを回避するために、紙に自分の考えを書き出していきます。例えば以下のような感じ:
考えたこと:英会話ができるようになりたい。
なぜ?:来年に海外旅行に行きたい。
どうやって?:英会話教室に通う
本当に?:オンライン学習では駄目か?
頭で考えるだけでなく、紙に書き出していくことでどんどん思考を前に進めていくことができます。
本書内では更に、
- 書き出したものを分類して不足している部分を意図的に埋めていく
- 自分以外の視点をイメージしながら別の意見を考えてみる
などのプロセスを用いることで、
これまでの自分にはなかった発想=「内なる言葉」を生み出していく方法が紹介されています。
語彙を増やす・集める
解説
自分が発する言葉に説得力をもたせたいとき、具体的な方法の一つとして、
自分の所属する分野の言葉を集めておくことが推奨されています。
例えば、学生ならこんな感じ:
課題、レポート、部活動、教室、夏休み、合宿、補講、進学、就職、試験、学食、通学路 など
なぜこれらを集めるかというと、自分や相手の所属する分野の言葉を使うと説得力が出るからです。
例えば野球部にいた学生が「このアルバイトは部活動よりキツイ」と言ったなら、
この言葉以上に、アルバイトのキツさをうまく表す言葉はなかなか無いかもしれません。
もう一つの方法は、自分の体感・動詞を集めることだといいます。
例えば、あまりに天気が良く「空を仰ぐ」
飼っていたペットが亡くなり「咽び泣く」
大掃除で家の窓を「磨き上げる」
それぞれ「空を見る」「泣く」「拭く」でも意味はたいして変わりませんが、ちょっと質感というか、臨場感が出ますよね。
この小さな違いを積み重ねることで、伝わる文章になるかどうか変わってきます。
自分が何かを感じたり行動したことを、どのような言葉で表現するか?ということを日常的に考えていくことで、内なる言葉は磨かれていきます。
いくつかのスキルを覚えて、型にはめる
解説
中学校までに習う「文章の型」をマスターすることで、伝わる文章が作りやすくなります。
例える・喩える
比喩表現や擬人化です。
「鬼のように怒っている」
「岩のように動かない」
「太陽のような人だ」
「イヤホンいつも家出する」など。
繰り返す
繰り返しには、大きく2つの効果があります。
「特徴的な言葉を繰り返して印象に残るようにする」ことと、「文章にリズムを作る」ことです。
特徴的な言葉を繰り返して印象に残るようにする
スピーチ「I have a dream」
この有名なスピーチも、中身の意味だけ考えれば「I have a dream」を何度も繰り返す必要はありません。
しかし、この言葉を繰り返して印象に残ったことで、後世にまで語り継がれるスピーチになったという側面もあるでしょう。
文章にリズムを作る
雨ニモマケズ、風ニモマケズ
意味合いだけを表現するならば「雨にも風にも負けず」で良いところを
「マケズ」の部分を繰り返すことでリズムを作っています。
一定のゆったりとした速さで語り聞かせるようなイメージを文章に含めることができています。
対句(ギャップを出す)
昨日の敵は、今日の友
「昨日まで敵同士だったとしても、ぶつかり合いを通して和解し、よい友になれるだろう」という意味合いの言葉ですが、敢えてまっすぐに反対の表現をぶつけてギャップを出すことによって、「おや?」と思わせることで記憶に残りやすい言葉になっています。
断定
我が辞書に、不可能の文字は無い
実際のところ、ナポレオンにも不可能なことはたくさんあったハズです。
それでも彼は敢えて、軍の士気を上げるためにこのように言い切ったと分析することができます。
たとえば逆に、「みんなの辞書に不可能は無いと思い込みましょう!」だったら、何も伝わらないしテンションも上がらないでしょう。
呼びかけ
少年よ、大志を抱け
呼びかける対象(この場合は学生)を想定して「少年よ」と呼びかけることで、
聴いている側である自分は未来のある若者であるという感覚とともに、勇気づける言葉をかけてもらったような気分にさせられます。
逆に、「えーみなさん、大志を抱きましょう」だったら全く印象にも残らず、
自分に言われていることすら気づかないでしょう。
総括:これからの行動1個
本書を読んで、わたしが実践することは以下です。
「思います」を避ける。
特に日本人は話すことに対して絶対の保証を避けたがる傾向があります。
断定を避けて責任を回避するといった意味で、「思います」といった表現は非常に便利です。
しかし、多用しすぎると言いたいことがボヤケてしまいます。
そのため、
- まず「言い切る」ことを前提にする
- 「言い切る」ためにも、しっかりと勉強や調査をして裏付けをとって発信する、表現する
こういった姿勢で、言葉を紡いでいく人になりたいです。
あと語り
英会話が出来ない、という悩みがある方は多いですよね。
でも、英会話ができないのは本当に「英語ができないから」なのでしょうか?
たとえばじゃあ、「日本語会話」だったら、問題なくできますか?
こう聞くと案外、多くの人が「日本語会話も、実は得意ではない」ということに気づいちゃったりします。
それはまさに本書の言うところの「内なる言葉」が未熟である状態で、
結局は「何を言うのか」が磨ききれていない状態です。
英会話ができない原因は、「英語ができない」のか?「そもそも英語ができたところで、海外の人と何を話せばいいのかわからない」状態なのか?
かなりきびしい問いです。
しかしこれに目を背けてしまうと、英語だけ勉強したのに何も話せない人ができあがってしまいます。
そもそも日本語でしっかりと会話ができているのか?言葉が作り出せているのか?常に自分でも精査して言葉を取り扱っていきたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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