コミュニケーション、上手くいってますか?
世の中には、「自分の言いたいことをうまく伝える」ということにフォーカスしたスキル本が山のように存在しています。しかし、どれだけ口がうまくなってもコミュニケーションがうまくいかないなら、聞く力に問題があるかもしれません。
今回はケイト・マーフィさんが書かれた「LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる」を要約します。長い本だったので7割くらい端折って、大事なところだけしっかり煮詰めました。
それではいきましょう。
ひとことまとめ
この本を一言で言うと:
「話を聞く」ことの難しさを、様々な研究をもとに説明し、「聞く達人」のエピソードをもとに「聴くことができる人」になるためのヒントを教えてくれる本です。
二行要約
この本が言っていることは、ざっくり言えば
- コミュニケーションにおいて「聞くこと」は「話すこと」に比べ軽んじられているが、実はかなり大事である
- 「聞けない理由」「聞く力の源」「聴き方」の3つを学んで話を聞けるようになると、コミュニケーションはもっと面白くなる
本書では、筆者のケイト・マーフィさんが「聞く達人」から実際に学んだことを、
数多くのエピソードを交えて紹介しています。
コミュニケーションに関する研究の中でも圧倒的に数が少ない「聞くこと」に対してしっかりと踏み込み、仕事や交友関係、子育てや夫婦関係にまで広く活用できる「聴き方」のヒントを与えてくれます。
厳選ポイント3つ
この本は数多くのエピソードが収録されており、さらに「聞くこと」に関連する研究など周辺情報も数多く収録されているため、すべて網羅してまとめることはしません。
そこで、全体の中で最も汎用的で、気づきの元になった箇所を厳選して3つ紹介します。
聞く力の源泉は、「好奇心」や「興味」である
解説
好奇心・興味を持って聞く
本書ではいくつかのエピソードで、好奇心・興味を持って話を聞くことについて繰り返し触れられています。
具体的には、以下のようなエピソードが紹介されています。
- インタビュー中、制限時間が迫っているなかでも急かしたり遮ったりせずに話を聞いた結果、予定していたよりも興味深く貴重な気づきを得ることができた話
- 「子育てに悩む親を支えるカウンセラー」の仕事を評価するファシリテーターが高く評価するのは、「親が子どもに興味をもつように働きかけたカウンセラー」だったという話
- 元CIAの主席尋問官が有益な情報を聞き出すために使っていた最大の武器の一つは「相手に対する好奇心」であった。という話
- 恋人や夫婦など親しい間柄になるほど「話が聞けなくなる」原因は、「相手のことをわかっている」という思い込み=近接コミュニケーションバイアス によるものである。という話
ここで示したエピソードはそれぞれ一言ダイジェストですが、
実際にはこれらのエピソードが細かく描き込まれていて、さながら短編ドラマ集のように読み進めることができました。
話を聞けない原因は、「次に自分が何を話そうか」考えているから
解説
相手が話しているときに頭の中で「寄り道」をしている
相手が話しているのに、つい「次に自分は何と言おうか」と考えを巡らせてしまい、気づけば全く話を聞いていなかった という経験は、多くの人に心当たりがあると思います。
もちろん、「聞く」ことと向き合うにあたって、この状態はよくありません。
しかし「自分が次に何を言うか」を考えずに話を聞くことは、自分が返せる言葉を用意できていない状況となり、会話における武器や鎧を手放している状態のように感じられ、不安になる人もいるようです。
それでも、すぐれた聞き手は「自分が次に何を言うか」と考えずに、相手の話に耳を傾ける努力をしています。
むしろ「自分が次に何を話そうか」と考えて相手の話を聞かなかった結果、相手の話とはズレた回答をしてしまうことになり、結果的にコミュニケーションエラーに繋がります。
武器や鎧を手放して相手の話を理解することに全力を傾けるほうが、的確な答えを返すことができ、円滑なコミュニケーションにつながるといいます。
聴くことは「アクティブ・リスニング」
解説
話を聞くとはなにか
「話を聞かないといけない」と考えたとき、それを「相手の口が動き終わるまで待つことだ」と解釈する人がいます。当然ですが、「自分が話すのを我慢する」ことと「話を聞くこと」は別です。
さらに「相手の発した言葉」をきちんと聞き取ることだけでも、まだ足りません。
それは単に音を「聞いている」状態であって、話を「聴いている」状態ではありません。
話を聞くことは受け身の姿勢ではない
それではどうすれば良いのか?
その答えは、アクティブ・リスニングという手法で表されます。
アクティブ・リスニングとは
アクティブ・リスニングとは、
相手の発した言葉の裏にひそむ「感情」
「その言葉を発した理由」
「本人にとって、その話がどのような意味を持つのか」
といった部分を探りながら聞くことです。
相手が話した「ことがら」は、話したい内容のほん一部にすぎず、語られる「事実」の裏には隠された「感情」があります。
わかりやすい例では、「冷蔵庫のプリンを家族に食べられた」という話に対して「また買えばいいじゃないか」と返す人なんかを想像してみれば、「事実だけ聞いて感情を読み取らない」ことの不毛さがイメージしやすいと思います。
能動的な姿勢で話を聴き、「この話の重要なところはなにか?」を探り当てることが、アクティブ・リスニングの聴き方です。さらに聞き手が探りあてたことを「聞き手自身の言葉で表現」したとき、話し手は「もっとも理解されたと感じる」といいます。
総括:これからの行動1個
本書にはさまざまな気付きがありましたが、わたしが1個実践することは以下です。
親しい人の話も「わかったつもり」にならずに聞く
本書内で個人的に一番刺さった内容がコレ。
「近接コミュニケーションバイアス」の部分です。
つまり、「親しい相手のことほど、わかっていると思い込んで興味が薄れ、話を聞かなくなる」心理のことです。
基本的には「この人が本当に伝えたいことはなんだろう」と考えながら聞くように気をつけているつもりですが、それでもやはり付き合いが長い相手や親しい相手に対しては、「わかったつもり」になってしまう感覚には覚えがあります。
わかったつもりになる→興味が薄れる→話を聞けなくなる→関係が悪化する というエピソードが本書内ではいくつか紹介されていますし、油断していると自分も同じようになってしまう気がして怖いので、肝に命じておきたい一節になりました。
あと語り
この本は多数の重要なエピソードがしっかりと描かれるためボリュームが非常に多く、今回取り上げた内容は割合で言えば全体の3割ほどの要約になっています。
本編ではこのあと、
「聞くこと」を避ける原因になる「知らない人を避ける心理」や「不確実性を嫌う心理」などが紹介され、そこから派生して「深く話を聞くことで自分が脅かされると感じる心理」に触れるとともに、「それらを乗り越えた先にもっと楽しいコミュニケーションの世界がある」ということが語られています。
この記事で興味を持っていただいたらぜひ読んでいただきたいのでですが、かなり沢山のエピソードが紹介されているので、若干消化不良になるかもしれません。
(話が多すぎて、「え、今の話は何が言いたかったの?」となる感覚)
読む際は、一気に全部理解・実践しようとするのではなく、自分が深く納得できたところから順に取り入れてみるのが良いでしょう。
ここで学んだ「話の聞き方」を実践し続けて、
成熟したコミュニケーションができる大人でありたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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