水平読書のススメ
ひとつのテーマで水平に読書をすると、その分野について解像度がぐっと上がる。
また、一冊の本=一人の主張 だけを鵜呑みにするリスクを回避することができる。
というわけで、今年に入って、ミニマリズム関連の本を11冊読んだ。
ミニマリストの定義
ミニマリストという言葉自体は世間一般に知られるようになったが、その定義にはかなり個人差があるように感じる。
ミニマリストと聞いて、「ものを全く持たない人」あるいは「ものを〇〇個までしか持たない人」といった、定量的な定義をイメージする人もいるかも知れない。
何もない、白い部屋。黒い服で床に座る人。
まぁ、確かにそういうミニマリストもいる。
しかし、多くのミニマリスト関連書籍を読んでいると、実はそれが本質ではないと主張するものが多い。
多くの書籍で共通して言われているのは、「不要なものを削ぎ落として、必要なことに集中する」といった主旨のことだった。
今回は、様々なミニマリスト・ミニマリズム関連書籍を読んでみたので、それぞれの本の概要をまとめていく。
個人的に「読んで良かった本」と「読まなくても良かった本」に分かれる形になったので、読んでみる際の参考になれば幸い。
読んでよかった本
ミニマリスト仕事術
この本は「薄い財布」をはじめとする、数々のアイデア商品を販売している「abrAsus」の社長である南 和繁さんが書かれた本。
ミニマリストというのは何も、モノを減らすだけの取り組みではなく、仕事にも応用ができる考え方だという話が中心になっている。いくつか紹介しよう。
プレゼン資料はいきなり作るな
仕事で上司に提案したい企画があり、プレゼンをしたいとする。
プレゼン用の資料を10時間かけて作り込み、いざプレゼン本番。
必死になって上司に説明したものの、「利益の予測の根拠は?」とか「〇〇の情報が足りない」とツッコミを受けたりといった、差し戻し・空振りに終わるケースがある。
そんなときに10時間かけて資料を作る前に、決済権のある社長や上司、取引先に直接、「こういう企画をやりたいんです。こういった理由から、利益が出ると確信しています。まずはこれだけの投資をして、これだけの利益を目指します」と言えば良い。
それでOKが貰えれば10時間で資料をつくる必要はなくなるし、OKが貰えなかったとしても問題点や課題、疑問に思われる箇所がわかるので、次回の参考にもなる。
「やることが当然・当たり前になっている、ムダな仕事」をいかに減らせるか考えることが大切。
予定の割り込みを減らせ
南さんの会社では、毎朝出勤したら「スケジューリング」の時間を割り当てているそう。
通常のサラリーマンは、スケジュールを管理するとしてもだいたいは「13時から〇〇さんとミーティング」「16時から会議」のような、誰かとのアポイントメントが多いのではないだろうか。
「人との予定は入れられるだけ入れて、空いた時間を自分の仕事に充てている」という人も少なくないだろう。
実際には、自分がしなければならない最重要な課題があるにもかかわらず、スケジュールに入れるのは「誰かとの予定」だけ。
これが、自分の仕事が進まなくなる原因だという。
たとえば「書類をまとめる」という必要な仕事があるのであれば、1日の始めに「13時から15時は書類をまとめる」とスケジュールに書いてしまう。もしほかの人に「13時から空いていますか?」と聞かれても、「すみません、その時間は予定があるので、15時からでどうでしょうか?」と、別の日時を提案することができる。
そこで、もし飛び込んできた案件が「自分のやろうとしていたこと」よりも大切なのであれば、スケジュールを調整すれば良い。
しかしスケジュールを空白のままにしていたならば、「空いた時間に書類をまとめよう」と考えているわけで、13時からの急なMTGには「空いているので」参加しなければならなくなる。
大事なのは、事前にスケジューリングしておくことで、「自分の大事な仕事」と、「飛び込みの仕事」のどちらが大事なのか、しっかり考えてから入れること。
大事なことをやる時間を守れ
仕事は大きく4つに分類することができる。
●重要度が高く、緊急性も高い
●重要度が高いが、緊急性は低い
●重要度が低いが、緊急性が高い
●重要度が低く、緊急性も低い
もっとも大事な仕事が「重要性も緊急性も高い」かと言えば、そうではない。
わかりやすいたとえとして、「切れにくい包丁で、ずっとキャベツを切っている人」の話がある。
人気のトンカツ屋さんで、次から次にお客さんが来るのだけれど、包丁が切れにくくて、キャベツの千切りをつくるのに時間がかかってしまう。結果、料理を出すのが遅くなり、回転率が低くなってしまう。 このとき本当にやるべきことは、数時間キャベツを切るのをやめてでも、包丁を研ぐことだ。
月10万円でより豊かに暮らすミニマリスト整理術
この本は、ミニマリストでYouTubeでも発信をされているTAKERUさんが書かれた本。
多くの汚部屋片付け企画や、ミニマリストとの対談企画を行っているミニマリスト。
汚部屋になりやすい部屋の特徴、誤った収納術の考え方、実は減らしたほうが良いモノ、少ないモノで多機能を実現するモノの提案をかなりボリューミーに書いている。
この本に限ったことではないが、ミニマリズムは個人差があり、多様性に富んでいる。そのため、TAKERUさんのミニマリズムが絶対的な正解というわけではないので、「自分に合うルールはあるかな?」とカタログを見る感覚で読むと良い。
紹介されているわかりやすいルールは、例えば以下。
- 靴は玄関に1足しか出さない
- トイレにマットを敷かない
- 全身シャンプーを使って浴室のモノを減らす
- ハンガーは必要な数だけ持つ
- 同じモノを複数持たない
- キャッシュレスを徹底する
- ポイントカードは持たない
- 買わなきゃ損 は結局金を払っていると心得る
- 時間を生み出してくれるモノは持つ
お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか
この本は、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが書かれた、「お金・貯金」という視点から「片付いている部屋」すなわち「日々の行動習慣」を紐解いていく本。
お金が貯まらない人の特徴
さまざまな家計相談のパターンを紐解くと、お金が貯まらない人の特徴には以下のようなものがあるという。
- 買い物好きでつい衝動買いをしてしまう
- 買い置きやまとめ買いをしていないと不安
- 「無料」や「おまけ」に弱い
- もったいなくて捨てられない
- 使ったものをもとの場所に戻せない
片付けると貯蓄体質になるフロー
著者の黒田さんいわく、部屋を片付けると貯蓄ができるようになっていくという。
おおまかな流れは以下。
- 片付ける
- モノとお金が見える化される
- スッキリ空間の心地よさに目覚める
- 我が家のモノの適正量がわかる
- 「本当に必要なモノ」と「好きなモノ」がわかる
- お金遣いにムダがなくなり、家計にゆとりが出る
- お金がたまり始める
お金にまつわるルール
本書で紹介されているお金が貯まるTipsには、「意外なルール」もある。たとえば以下のようなもの。
お酒はコンビニで買う
お酒はスーパーで買うと安い。というのは、あくまで「単価」でみたときの話。
スーパーでやすいからとまとめ買いすると、つい「飲みすぎ」に繋がり、結果として単価が安くても高くつく。
お酒を飲まない人では、スイーツなどの嗜好品でも単価が安いからとまとめ買いしないほうがお金は貯まるという。
少し単価の高いコンビニで「都度買う」ことで「一晩の出費」を減らすことが大切だそう。
その他にも様々な「お金にまつわる特徴」
ほかにも、ファイナンシャルプランナー目線でのお金を貯めるルールが紹介されている。
例えば以下:
- コスパにこだわりすぎる人は資産を損ねやすい
- 連休、突然予定が決まる家はお金が貯まりにくい
- 犬派より猫派のほうがお金は溜まりやすい
- 認知症で600万円払いたくなければ40代からウォーキングをする
- SNSで「いいね!」を欲しがる人ほど、無駄遣いしやすい
厳密にはミニマリズムを主題とした書籍ではないが、本質的には「不要なモノに埋もれるのをやめて、大切なことに集中する」「足るを知り、必要以上に買い込まない」といったミニマリズムに通じる考え方が多数紹介されている。
手放す練習 ムダに消耗しない取捨選択
おそらく、数々のミニマリスト系発信者の中でも最もインパクトが強く、過激派に見えるミニマリスト「しぶ」さんの本。
この表紙でわかるように、まさに「何もない白い部屋、黒い服で床に座る人」の具現化である。
服は全10着、靴は3足。家具や家電含めてもすべて数えられるほどしか持っておらず、タクシー1台で引っ越しができるほどだという。
そんなしぶさんは、裕福な実家に生まれたものの自己破産にまで追い込まれた経験をもつ。
僕は専業の投資家として資産を得ていた父のもとで育った。裕福な時期こそ専業主婦の母がよく整理整頓をしていて、とても綺麗な家だった。ところが、リーマンショックを機に父の投資が上手くいかなくなり、自己破産に追い込まれると、家の中が一変する。 300㎡ある広い家で、外庭にもコンテナの物置があるにもかかわらず、家中がモノであふれる「ゴミ屋敷」に。親はネット通販にハマり「セールで安いから」「ポイントがたくさんもらえるから」と理由をつけ、玄関にはペットボトルや段ボールが山積みに。お得な買い物に見えて、けっきょく賞味期限を切らし、ストックがあるからとツマミ食いで太っていくなど悲惨だったが、買い物の新鮮さはすぐに薄れ、しだいに気分も預金も落ち込み、片付ける余裕もなくなる。
そんな経験を経て、次のようにしぶさんは言う。
「ドラマの演出では『貧乏人の家』にはモノをわざと増やし、余白をなくすことで『貧困』を表現する。逆に、豪邸のセットではモノを減らし、何も置いてない床の面積を増やして『余裕』を表現する」
僕の実家時代もそうだった。裕福なときはモノが少なく、「自己破産」して貧乏なときはモノが増え、常に散らかっていた。
「キミの敗因は容量のムダ使い」と、『ハンター×ハンター』のヒソカは言った。 「情報を増やして『忙しく』させて、相手の連携に混乱と隙を作れ」と、『ワールドトリガー』の東隊長も言った。ジャンプ漫画の強者たちが口を揃えて言うのだから、間違いない。何が足りないって、余白が足りないのだ。
本書では、様々なものを減らすにあたっての考え方、減らす理由、ルールなどが痛烈に列挙され、いずれも筆者の実体験に基づく強烈なメッセージ性でもって、「減らすことで得られる効果」を様々な角度から説明している。
やや過激と感じられる部分もあるが、そこはミニマリスト本との向き合い方の基本原則「鵜呑みにしない」を思い出しながら、読み勧めてみてほしい。
最後に、本書で最もわたしが共感し、ミニマリズムに興味を持つきっかけになった一節を引用しておく。これを読んでワクワクした人は、ぜひミニマリズムを少し体験してみてほしい。
モノが少ない幸せを、ひと言で例えるなら「旅の身軽さ」そのものだ。
旅行のときには誰しもカバン1つで暮らし、綺麗に片付いたホテルの一室でほっとひと息つく。旅の前日に、どんな服で観光を楽しもうかコーディネートを考える。持っていける数には限りがあるから、自然と「お気に入りの 1コーデ」を選ぶだろう。
メイク用品や常備薬も「これだけは絶対にないと困るモノ」に絞り、逆に「まぁ、あったら便利だけどなくても困らないな」というモノは家に置いていく。最悪、忘れ物をしても、現地で買い足せば最低限はしのげるし、まぁいっかとポジティブに考える。
車で行けないような遠方の旅行も現地のレンタカー利用で移動の不自由もない。
旅先では休むために、ぼーっとしてもいい。好奇心のままに観光地を散策したり、レジャーで遊び尽くしてもいい。旅の最中なら日常の家事や仕事に追われる心配はない。外出時はホテルやコインロッカーに荷物を預けて手ぶらで散歩する。
朝のコーディネートに頭を悩ませる必要もなく、旅の前日にあらかじめ用意した組み合わせを着るだけ……この身軽さ、快適さこそがミニマリストの言う「モノが少ない幸せ」そのものであり、それが 365日、日常でも続いている感覚だ。
より少ない生き方
ミニマリストブームの世界的な火付け役となったジョシュア・ベッカー氏の書いたミニマリスト本。ミニマリストならその名前を知らない人はいない。たぶん。
この人の本は、英語からの翻訳であることや、著者がキリスト教の牧師であることもあいまって、優しく語りかけるようでいて説得力がある。
概要
ガレージにあふれたモノの片付けに追われ、最愛の息子をないがしろにしてしまった経験から、著者はミニマリストになる。モノを減らす過程で、「ほんとうに大切なものはなにか?」を問い続け、必要なことにエネルギーを注ぎ続けることができる人生を手に入れた。
その経験を通して、さまざまな人と出会い、ミニマリズムの力を実感し、多くの人にその素晴らしさを広め、多くの仲間がその威力を実感し、人生を変えている。その過程で得られたノウハウや、ミニマリストになるためのルールをわかりやすく解説しながら、自分や仲間たちの実体験を紹介している。
アメリカで書かれた本であるため、マイホーム事情や銀行のローンの仕組みなどについてはアメリカ基準で書かれていることに注意してほしい。同様に、寄付や慈善事業の仕組みについても日本とは異なる点があるだろう。
全部鵜呑みにしないこと
ここでも、ミニマリスト本を読むときの鉄則「鵜呑みにしない」が活きてくる。
一部の記述が(例えば、ミニマリズムで余った服やお金はホームレス支援に回そう、といったアドバイスなどが)日本の実情に合わないからといって、ミニマリズム全体が日本に合っていないということにはならない。
この本を通して、著者は下記の目標を立てていたという。
わたしが思うに、この目標は十分に達成されている。
この本を書き始めたとき、私は1つの目標を決めた。 それは、「具体的なミニマリズムの方法だけでなく、ミニマリズムの本来の目的も読者に伝える」という目標だ。そして本来の目的とは、いちばん大切な夢を追い求める自由を手に入れることだ。
より少ない家大全
より少ない生き方 でジョシュア・ベッカー氏のミニマリズムや文章に共感を覚えたら、ぜひとも実践編として読んでほしいのが本書。
家の1部屋ごとに、どのようにモノを減らすと良いのか?どうなったらミニマル化完了なのか?を解説している。
簡単なところから始めて成功体験を積みつつ、徐々に難しいところにチャレンジすることを勧めている。
実践してみよう
ミニマリズムの神髄は、読んで感心することではなく、自分で実感してみることにある。
誰しもが不要なモノを持っている現代、1部屋だけでもミニマル化をしてみると、他の部屋も同じように快適な空間にしてみたいと思うようになるだろう。
ぼくたちに、もうモノは必要ない。
編集者の佐々木典士さんが書かれた本。
人から貰った「〇〇さんから電話ありました」という伝言メモを捨てられないほど、モノを捨てられないマキシマリストだった著者。
そんな人が、ミニマリストになって人生が変わったことを丁寧に語り、モノに支配されていた時代を振り返りつつ、具体的にどのようにモノを減らし、いかにして人生を変えられるのかを解説している本。
イチ読者の感想として言葉を選ばずに、また本人も自称されている言葉で著者を紹介すると、「クズだった人」という言葉で紹介したい。念の為重ねて言っておくが著者に対する個人的暴言ではない。
等身大の「クズ」が書くミニマリズム
誰しもが持ちうる「見栄」「持ち物が自分を表現しているような気になる」といった心情の部分を赤裸々に記述しており、「わかる、わかるけど流石にクズだな」と思わされる部分がある。だがそこがいい。
誰しもが共感できる「等身大のクズ」がそこにいて、どのようにしてミニマリズムを会得し、人生を変えて行ったのかが書かれている。自分たちと同じ感覚を持った人間なのだと安心する。
時折ハシャギすぎてウザいと感じる言葉選びもあるが、その分「人生が劇的に変わった等身大のクズの言葉」っぽくて、それもまたいい。繰り返しておくがこれは暴言ではなく、「誰の中にでもあるクズの部分を残しながらでも、人生は変えられる」という安心感でもある。
「しぶさんのような波乱万丈な人生譚は重いよ。そんな重いものを押し付けないでくれ!!!!」というメンタルの方には、この本は「ほどよいクズ加減」なので読みやすいと思う。
ただし繰り返すが、この本についても、ちょっと賛同しかねる部分というのがあると思う。たまにちょっとハシャギすぎている節がある。相容れないと感じたら、その感覚は大事に持っておいて、取り入れやすい考え方や行動だけをうまく抜き取るつもりで読んでほしい。
半分、減らす。「1/2の心がけ」で、人生はもっと良くなる
禅僧で精神科医の川野泰周さんが書かれた本。
本書は厳密には「ミニマリズム」について書かれた本ではない。
むしろ、「人に見せるためのミニマリスト」には警鐘を鳴らし、しかしそれでも、古来からのお寺での修行などを通した「ミニマムな生活」の利点を紹介する。
「中道」の考え方をたいせつに
「なにごともほどほどに」という意味の「中道」の考えも紹介されている。
本記事で紹介する他の本を読んでミニマリズムを実践し、一旦「明らかに不要なモノ」を減らしきった人、「これからもっと減らせるものはないだろうか」とギラギラした目をしている人にこそ、一旦ゆっくりと読んでみてほしい。
とりわけ、本書で語られる”「捨てる快感」に取り憑かれるままにミニマリストになり、断捨離とSNSででのアピールに力を使い果たし、心の不調をきたしてしまった人の話”は、
これからミニマリズムを取り入れようとする人が心にとめておくべき話だろう。
断捨離は「すればするほど偉い」ものではない。断捨離は目的ではなく、大切なものに集中するための手段である。また、断捨離にはモノを新たに買うときに似た高揚感があるので、依存には十分注意すること。
この本では、禅の修行でも「あの修行は身体に悪かった」とか、「あのやり方は最適ではないが、こういったことを学んだ」といったふうに、何事にも極端に傾倒しない「中道」の精神を持ってさまざまな学びが語られているので、どちらかと言えば安らぎを得られる本になっている。
読まなくてよかった本
読まなくてよかった本の特徴
あまり読まなくても良いと感じた本は、総じて「こうしています」「これを捨てました」「これだけしか持ちません」のような現状報告の類か、または「読んで良かった本」にあげたような書籍を読んで実践してみた人が、実践したことを紹介し、その効果が実感できた!と書いているだけのケースが多い。
ググったらわかることを「調べてみました」と言って掲載している「いかがでしたかブログ」と大きく変わりない、とも思う。
それでも、ミニマリズムを実践してみた人が、その効果に感動して本まで書いてしまうのだなぁ。と思える意味ではミニマリズムのパワーを証明しているとも言えるかもしれない。
ミニマリストのものの減らし方 心の満たし方
この本は多くのミニマリストの現状や、マイルールのようなものをカタログ形式で紹介しているもの。
ミニマリズムの多様性を認識して、いろんな人がいるのだということが分かるメリットはある。
また、生活の悩みに対して、片付けることがどのように効果を発揮したかという体験談を見ることができる。
一方で、ひとりひとりの試行錯誤や、どのように減らしていくのかといった考え方の部分は浅くなるため、どうしても「画角の中だけスッキリしている写真」が並んでいる感もある。
ファッションミニマリストになる危険が高まるので、表面だけなぞるなら読まなくて良い。
ミニマリストを実践しながら、自分にとって良いバランスを見つける参考にすると良いかもしれない。
シンプリスト生活
Tommyさんの書かれたこの本は、ミニマリズムに対してやや否定的なスタンスを示すところから始まる。
どうやら、ミニマリズムを実践したものの「減らすことを優先してしまって、何にも挑戦できず、すべてを諦め、自分を抑圧していた」という経緯がある様子。
その時点で「大事なモノを選び取る」というミニマリズムの原則から外れているし、失敗するのもむべなるかな、という感じである。
忘れるなかれ、ミニマリズムとは捨てることではなく「大事なモノを大事にするために、不要なモノを捨てること」、そして「いちばん大事なモノを大事にするために、そこそこ大事なモノを捨てること」だ。
「大事だから」といって、すべての対象に自分の時間を24時間ずつ注ぐことはできない。
もちろん、本は著者の言いたいことを書くことができるメディアだから、何を書いても良い。
しかし、自分の失敗を「ミニマリズム=ストイックに捨てるだけの人」という誤った認識のせいにし、「ミニマリズムは減らすことを優先して不便になることでしょう。自分はそう思っている。でも自分はそうじゃない。ちゃんと好きなものに囲まれている。」と説く。
妄想で言いがかりをつけるオジイチャンと大差ない気がするが。
書いてあること自体は参考になることもあるが、そもそものスタンスがわたしには合わない。
ミニマリストになって、モノを捨てたら「お金」と「時間」が増えた!
ミニマリスト初心者向けの書籍を謳う本。著者はSHINYAさん・佐竹 真さん とある。
表紙に著者名を書きなさいよ。
概要
平たく言えば、ここで紹介した「読んでよかった本」たちのまとめ本であり、ミニマリズムを実践してみた感想を述べている、という意味ではこのブログと大差ない内容。
書籍でありながらも、「ミニマリズムを始めた人の体験記」の側面が強く、少しミニマリズムを実践してみて変化を感じた人が、「そうそう、わかるわかる」と読むなら良いかもしれない。
しかし、初学者が何かを学ぶにしては「語り」が足りない。
服を減らすにしても「減らしました。快適ですよ」なんて話を聞きたいのではなくて、なぜ1着なのか?3着や2着ではだめな理由は?1着に決めるまでに試したことは?考えたことや、他にも応用できそうな気づきは?
結果よりプロセスを学ぶべき
「語り」にこそ、ミニマリズム系書籍の価値の神髄がある。
ジョシュア・ベッカー氏の「より少ない生き方」などはその典型だ。例えば以下のような記述がある。
「我が家の車を2台から1台に減らせないか、29日間の車1台生活にチャレンジした。しかし家族構成、子供の送迎事情などから、1台より2台のほうがストレスが少ないことがわかった。だから今の時点では車は2台必要だと判断した。」
徹底した世界的ミニマリストですら、冷静に手放すべきものとそうでないものを判断し、そのプロセスを紹介して、「そういうケースもあるんだよ」と教えてくれる。
これが先駆者の言葉であり、書籍の価値でもある。
だから、「こんな本を読んで、試してみました!よかったです!みんなもやろう!」なんて情報に価値はない。時間の無駄とは言わないが、ここまで紹介した本を読破していれば、新しい情報は特にない。
まとめ・取り入れたこと
11冊読んで見えてきた「自分ルール」
11冊のミニマリズム・ミニマリストの本を読んで、
自分なりにミニマリズムとの向き合い方を見出しつつあるので共有しておく。
捨てる快感にハマらない
捨てる快感にハマることは、買う快感にハマっていることと本質的に同じ。
全てを捨て終わったら、また要らぬ買い物をし始めるだけになり、無意味。
同じものは1つだけ持つ
白いシャツ、黒いスキニーデニム、お気に入りのボールペン。
便利だから・好きだからと複数所持していたものを、それぞれ1つに減らした。
シャツの洗い替えなんてなくても、白いシャツを着ない日は黒いパーカーを着れば良いし、黒いスキニーデニムを着ない日はブルーのジーンズを履けば良い。同じモノがある必要はない。
ストックしすぎない
洗剤を敢えて一年分買っておく必要はない。今どきAmazonで翌日には届くのだから、最悪無くなってからでも間に合う。
クリック一つで翌日届くようなモノを保管しておくために、そのスペース分の家賃を払っていいのか?
買えば便利 を疑う
一見便利な収納アイテム。
収納するほどモノがあるからそんなものが必要になる。
そもそも中身のものを減らせないか?徹底的に考える。
それでもどうしても必要なモノならば、便利な収納を使って片付けるのも良い。
買わないと損 を疑う
今買えばお得 という言葉がある。ポイントが何倍つくとか、普段より何割引だとか。
よく考えれば買わなければ出費は0円なのだから、そもそも買わないのが一番お得。
さらに収納も不要。散らからない。メンテも要らない。だって持ってないから。
「進研ゼミをやらせてくれない親」を心に住まわせておく
昔、進研ゼミの広告がポストによく入っていた。
その広告には必ず、漫画が同封されていた。大体内容はいつも同じ。
進研ゼミで勉強してテストでいい点をとり、クラスでちやほやされたり先生に褒められたりする、サクセスストーリー。
子どもはそれを読み、親に「ゼミやりたい」とねだる。
しかし親は「前にもそうやって始めて、結局やらなくなったでしょう」と一蹴する。
どこの家庭でも数回は発生したイベントなのではないだろうか?
これを参考に、
何か欲しいものが現れた時に、進研ゼミをやらせない親を心の中に呼び出すのだ。
「あんた、この間それと似たようなもの捨ててたでしょう?今買っても、またどうせ捨てるんでしょう?」
毎晩、すべてのモノを「定位置に戻す」。できないなら「持ちすぎ」
いくつかの本で紹介されていたミニマリズムのメリットの一つに、
「朝、片付いた部屋で目覚めるのって気持ちいい」という話がある。
これは本当にそうで、毎朝気持ちよく起きることができる。
そのためには、当然だが寝る前に片付ける習慣が必要になる。
iPadを所定の位置に戻して充電器につなぎ、使ったペンをもとの位置に戻す。
はさみが出ていたら棚の取りやすい位置に戻し、コップが出ていたら食洗機に入れるか洗ってしまう。折りたたみのエコバッグが出ていたら畳んでしまう。
クロゼットの扉が開いていたら閉めて、床に落ちているものがあればすべて「もとの位置に戻す」か「捨てる」。
これを毎晩やる。毎晩だ。
そう、ミニマリズムは「特効薬」ではなく「習慣」だ。
一度取り組んで終わりではなく、その後ずっと、程度こそ微調整されながらも、持続していくものだ。
だから、毎日の習慣、すなわち「今日なにをするか」まで落とし込み、毎日取り組む必要がある。
想像すると途方にくれるかもしれないが、安心してほしい。
モノを減らすと継続も簡単だ。
思考実験:もしトイレのあとの手洗いが超絶面倒だったら
例えば、皆が普通だと思って実践している習慣として、
トイレの後に手を洗うという行動がある。マナーのある一般人ならば当然の行動だと思う。
これがもし、「トイレにいったらシャワーを浴びて全身洗いなさい」という常識・文化だったらどうだろう?流石に面倒くさいと感じるだろう。仮にそんな世界があったとする。
そこへミニマリストがやってきて、「トイレの後って本当に身体を洗う必要あります?手だけでよくないですか?」と言ってくれる。
やがてそれが広く浸透し、皆がトイレのあと手を洗う文化が定着し、今では誰もそれを負担だと思わずにやってのけている。
あなたの部屋は、トイレの後に毎回身体を洗うような負荷を、あなたに強いていないだろうか?
毎回片付けるのが大変なのであれば、それはモノが多すぎるのかもしれない。
(もちろん、家族が散らかしたモノもあなた一人で片付けろと言っているわけではない。ジョシュア・ベッカー著の二冊では、家族ぐるみでミニマリズムを実践する方法も分厚く紹介されている。)
ちなみにトイレのあとに手を洗う云々の話は、本の要約ではなくわたしの思いつきである。
11冊分の紹介は以上。
今回紹介したうちの何冊かを手に取り、自分なりのミニマリズム、つまり「何を大切にするのか」を考えてもらうきっかけになればと思っている。
Kindle Unlimitedをうまく使おう
ちなみに、Kindle Unlimitedには残念な本も多いが、ここで紹介した何冊かは読み放題で読むこともできる。
おすすめは1ヶ月だけ登録して、読みたいものを全部読み、解約してしまう方法。
よかったら下のリンクからチェックしてほしい。
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