2023年の読書・要約まとめの第一弾は、個人的に2022年読んで良かった本ランキング1位の『嫌われる勇気』とさせてください。
厳密には今年読んだ本ではないので、これは100冊には含めないでおこうと思いますが、とにかくこの本を紹介しておかないと他の本の紹介にも差し支えることが全然あるので、先にこれを紹介しておこうと思います。
ひとことまとめ
本書を一言であらわすなら、
人間の悩みの根源を明らかにし、それとの向き合い方や今からやるべきことの方針を示してくれる本です。
二行要約
本書の内容を二行でまとめると、
- 人のすべての悩みは、人間関係の悩みである
- 人が幸福になるためには、他者の課題を切り捨てること、すなわち「嫌われる勇気」を持つことである
解説・概要
本書は「アドラー心理学」を題材に、「青年」と「哲人」の2人の会話形式で進みます。
悩める青年に対して、哲人はアドラーの教えを軸に、対話をおこないます。
その中で哲人は、「人は変われます」と青年に説きますが、一方で青年は
「自分が不幸なのは、その出自、過去のトラウマ、それによって形成された性格のせいである。人は簡単には変われない」
と激怒し、哲人の考えに対して徹底的に反論していきます。
青年、いい仕事してる
本の構成として、この青年の存在が絶妙に良い仕事をしています。主な役割は以下の2つ。
- 読者よりキレ散らかしている人がそこにいるので、読者は否応なしに冷静になる
- アドラーに最初に触れた人の否定的な反応を代弁してくれ、読者に「受け入れ難いと感じているのは自分だけではない」という安心感を与えてくれる
著者→読者 ではない心地よさ
この対話形式の構成によって、「著者→自分」という「教え」の流れではなく、
「哲人⇔青年」の対話を「観察」することで、読者は気づきを得られる構造になっています。
人間は「教えてあげよう、○○はXXすべきだ」と言われると、どうしても抵抗が生まれるものなので、この手法は見事と言うほかありません。
2行でまとめるの、無理
本書は名言・至言・格言のラッシュが凄まじく、2行でまとめるのは正直無理でした。
ぜひこの続きの厳選ポイントまで読んでみてください。
会話の中で哲人が話す言葉には「納得させられる」や「驚かされる」言葉が多く、実際「これは良い言葉だ」と思った部分にマーカーを引きながら読んだとき、本文のほとんどに線を引きたくなるほどでした。
厳選ポイント3つ
過去の「原因」ではなく、いまの「目的」
要点・解説
アドラー心理学では、過去の出来事による意思決定を否定する
過去に○○があったから、今の自分はXXするのだ、という考え方を「原因論」といいます。
一方で、「○○を目的として、XXをする」と考えるのが「目的論」といい、アドラー心理学はこちらの考え方を軸にしています。
過去に何があったとしても、その意味づけは自分で変えることができ、
それによって今からの行動を変えることができる。という考え方です。
どれだけ苛烈で辛い過去があったとしても、人は「今」から変わることができる
過去の経験が自分の行動を決めるのだとすれば
例として、「過去に虐待を受けていた人が、自分の子どもにも虐待を加えてしまう」ケースを紹介しています。
もし「過去に虐待を受けたから、自分の子どもにも虐待を加える(原因論)」ことが人間の本質だとすれば、虐待を受けた人全員がそうならなければ、辻褄があいません。
でも実際は、必ずしもそうではないはずです。「自分は虐待されていたけれど、自分の子どもは同じ目に合わせない」と決心する親もいることは、想像に難くありません。
それが、「過去によって人生は決まらない」といえる根拠の一つになります。
感情が自分の行動を決めるのだとすれば
もうひとつ面白い話があります。
「怒りに我を忘れて○○してしまった」という状況をも、アドラー心理学は否定し、
「怒りを使って目的を達成しようとした」選択をしたのだ、と考えます。
ここでは、「子どもに怒り、怒鳴り散らしている親」を例に示しています。
「子どもが言うことを聞かないから、わたしは怒っている」と親は主張します。
しかし、子どもに怒鳴り散らしている途中、電話が鳴ります。電話の相手が子どもの担任の先生だということがわかると、途端に明るく丁寧な口調になり、怒っていたことなど感じさせないトーンで会話をすることができます。
「子どもがいうことを聞かないから、自分は怒っている」が正しいのであれば、担任の先生から電話がかかってきても、かまわず怒っていなければ、辻褄があいません。
つまり「怒り」というのは自分の意思で出し入れできる道具であって、「親が子どもを威圧し服従させるために、怒りを取り出して使った」と、アドラー心理学では考えます。
部下に対して怒っている上司が、そこに通り掛かった社長や取引先からの電話には丁寧に対応するような風景にも、同じことが言えます。
「課題を分離」する
解説
ある国に「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を呑ませることはできない」ということわざがある
人にはコントロールできることと、できないことがあります。
アドラー心理学ではこれを「課題の分離」と表現します。
コントロールできないことに集中することは、
馬に水を飲ませるために不毛な労力を使い、疲弊することと同じです。
あなたにできることは、馬を水辺に連れていき、見守ることだけです。
馬が言うことを聞かない!水を呑んでくれない!と怒るのは簡単ですが、それが不毛な怒りであることは、誰の目にも明らかでしょう。怒っても馬は言うことを聞きません。
この時に注意したいのは、「水を飲まなかった結果、困るのは誰か」ということです。水を飲まなかったせいで死んでしまうのは言うまでもなく、馬自身です。
「結果を引き受けるのは誰か」を考えることが、課題の分離の第一歩
子どもに「勉強しなさい」と叱ったり、ご褒美や罰でもって強権的に勉強をさせる親がいます。
子どもが勉強しなくて困るのは、ほかでもない、子ども自身です。
世の親たちは「あなたのためを思って」という言葉をよく使います。しかし親たちは明らかに自分の目的(世間体・見栄・支配欲など)のために動いています。
つまりそれは「あなたのため」ではなく「わたしのため」であり、その欺瞞を察知するかこそ、子どもは反発するのだといいます。
以下のような姿勢が大切だとアドラーは説く
- 親は「勉強しなさい」と強権的に要請するのではなく、子どもが自発的に何をやっているのかを知ったうえで見守ること
- 勉強するかしないかは本人の課題であることを伝え、もしも本人が勉強をしたいと思ったときには援助する用意があることを伝えること
- 頼まれもしないのに子どもの課題にあれこれと口出しをしないこと
- どれだけ子どもの課題を親が背負い込んだところで、子どもは独立した個人であって、
親の思い通りになるものではないと理解すること
他者の課題を切り捨てる
相手が自分のことをどう思うかは、相手の課題
あなたのことをよく思わない人がいても、それはあなたの課題ではありません。
他者が自分のことをどう思うか?に干渉することは、他者の課題に踏み込むことに他なりません。
相手が自分に何をしてくれるかは、相手の課題
「自分のことを好きになるべきだ」「これだけ尽くしているのだから、好きにならないのはおかしい」と考えるのも、相手の課題に介入した見返り的な発想です。
それは相手の課題に集中することであって、
無意味であるばかりか、自分が辛いだけの考え方になります。
信じるということもまた、課題の分離
相手のことを信じるかどうかは、あなたの課題です。
しかし、その信頼に対してどう動くかは、相手の課題です。
承認欲求を否定する
解説
他者からの承認を求めてはいけない
アドラー心理学では、他者からの承認を求めることを明確に否定します。
その理由は、
- 「他者から承認されるためにでなにかをする」状態は、「他者から承認されないならば何もしない」ことと同義である
- さらに悪化すると、「期待したとおりに他者から承認されない場合、怒ったり相手を責めたりする」考え方につながる
ここで大切になるのが前項の「課題の分離」の考え方です。
- 自分の行動の結果、相手が自分を嫌いにならないことを期待する。
- もし望む反応・承認が得られないと落胆したり、怒ったりする。
- つまり、「他者が自分をどう思うか=他者の課題」に踏み込む姿勢そのもの
ではどうすればよいのか?
課題を分離し、
自身の行動の結果相手がどう思うかは相手の課題として切り捨て、
自分のことを嫌いになることも、相手の課題であり相手の選択である。と考えること
これが、「嫌われる勇気」というタイトルの正体です。
総括:これからの行動1個
他者の課題を切り捨てる
わたしは基本的に、人から悪く思われたりすると落ち込むタイプです。
人に迷惑をかけたと感じたときはやっぱり気にしてしまいますし、
それによって嫌われないかな、と考える気持ちは比較的強い方だと思っています。
それでも、人が自分を嫌いになるかどうかはその人の課題であって、自分にはどうすることもできないということ。この本の内容・アドラーの教えを受け入れるかどうかに関わらず、それは確かに変わらない事実なのだろうと納得しています。
なので、わたしがこの本から得た学びをを1つの行動に絞るとすれば、
「他者の課題を切り捨てる」という姿勢を忘れずに持つこと、となります。
あと語り
いきなり要約が難しすぎる本を選んでしまった
今回、要約記事に初チャレンジしてみましたが、本書は非常に要約が難しい部類のものでした。
理由をわかりやすく例えるなら、どこをとっても美味しい料理の、一番美味しいところを抽出する作業とでもいいましょうか。選べないんですよね。どこも美味しいので。
この「嫌われる勇気」という書籍は、どこをとっても衝撃的な言葉にあふれており、比喩ではなく鳥肌が立つようなフレーズも数多く書かれています。
この記事の内容では、この1冊のなかで語られる大切なことのうち
たぶん2割ほどしか紹介できていないと思っています。
本書にはまだまだ大事なことがたくさん書かれていて、わたしが取り上げなかった部分がブッ刺さる人もかならず居るとおもいます。
インターネット時代の悩みにこそ刺さる、アドラー心理学
昨今、インターネットでのさまざまなバッドコミュニケーションによって、心を病み、活動休止・インターネットからの退場、病院での治療が必要になるケースはあとを絶ちません。
承認欲求という言葉が一般的になり、皆がそれを当たり前に受け入れているなかで、
根本から承認欲求自体を否定するアドラー心理学。
インターネット時代に悩める現代人にこそ、ぜひ本書を手にとって、
何かを感じてほしいと思っています。
まぁ、読んで欲しいと願うのはわたしの課題、
読むかどうかはあなたの課題なので、結果までは、わたし知りませんけどね。
でも、もし読んでみて、何かを思ったら、ぜひ語り合いましょう。
実はまだ半分しか紹介してない
ちなみに今回はタイトル回収である「嫌われる勇気」というフレーズが出てくる部分までを紹介しました。
実はこの本の半ばくらいまでしか来ていません。
それを踏まえたうえで、この記事の最後に、哲人からの言葉をもう一つ引用させてください。
「課題の分離は、対人関係の最終目標ではありません。むしろ入り口なのです。」
機会があれば、この本の後半部分、
また続編である「幸せになる勇気」も紹介したいと思っていますので、お楽しみに。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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